Monthly Column マンスリーコラム

2024年12月号

人生100年時代 〜みんなが生き活きとはたらく未来へ【前編】

私のキャリアストーリーを振り返る〜挫折と挑戦が教えてくれたこと

はじめに

こんにちは。いわてキャリアコンサルタント研究会理事の佐々木です。

私はいわてキャリアコンサルタント研究会の活動のほかに、有限会社ノーティ代表としてパソコン教室の運営や職業訓練の受託運営の仕事をしています。また、NPO法人「わこの家」での保育所や学童クラブの運営にも携わっています。

私は、これらの活動や仕事を通じて、皆さんが毎日生き活きとはたらくことができる環境を作りたいと考えています。それが社会全体の活性化に繋がると信じています。

今回の記事では、前後編に分け、キャリアを見つめ直すために参考にして欲しいアプローチの方法や、生き活きとはたらくために活用できる制度をご紹介します。一人ではなかなかできないことでも、周りの助けがあると意外と簡単にできることもあるのではないでしょうか?

この記事が、皆さんの生き活きとした働き方を見つけるきっかけになれば大変嬉しいです。

1、キャリアストーリーを振り返る

ここで一つ質問です。皆さんは毎日生き活きとはたらけていますか?ちょっと振り返ってみていただければと思います。

私は、それぞれの社員が毎日生き活きとはたらけているのか、そのために何が大切なのかは一人ひとり違うと思っています。例えばその人自身のやりがいやスキルアップ、人間関係、健康といった様々な要素が存在すると思いますが、所属する会社の社長や上司の機嫌、何気ないひと言も、実は大きな影響を及ぼすかもしれません。

私のキャリアストーリーから、自分なりに振り返ってみたいと思います。

26年前に現在のパソコン教室の仕事を始めた当初、生徒さんから経歴についてよく質問されました。

私が「前職はパソコン・家電メーカーの販売会社で営業をしていました」と答えると、生徒さんは「だからパソコンに詳しいんですね。それで独立してパソコン教室をはじめたんですね。」と納得するのでした。学歴について聞かれると「大学には行かず、高専の電気工学科出身です」と答えるのですが、それもまた生徒さんに納得されました。

しかし、実際は生徒さんの想像とは全く違う理由で、私はパソコン教室をはじめたのです。その理由は「パソコンが嫌いだった」から。そして「パソコンができる人が大嫌いだった」からです。

高専に進学したのも電気工学を学びたかったわけではありません。なんとなく「夏休みが長い」「私服で通える」という理由からでした。入学のためには必死に勉強したものの、在学中は勉強せず、資格取得にも挑戦しませんでした。

今では学生時代の時間をもっと活用すべきだったと少し後悔しています。「最初のチャンスのときが一番やりやすい」という教訓を得た体験でした。

2、アルバイトから始まったキャリア

私のキャリアは、高専2年生の時に始めた和風レストランでのアルバイトから始まりました。

皿洗いから接客やレジ係へと進む中で、お客様との触れ合いや感謝の言葉に喜びを感じ、働くことの面白さを知りました。また、私の働きぶりを認めてくれたのか、社長から「うちの社員にならないか」と言われたこともありました。驚きと同時に自信に繋がったことを覚えています。

その後、高専3年生の秋に学校を休学し、家電量販店でアルバイトを始めました。接客や商品説明、配達設置だけでなく、オーディオフェアの企画やDM作成にも携わり、仕事の楽しさをさらに実感しました。

一方で、その後学校に復帰すると、アルバイトをしていた時と比較して授業が退屈に思え、「自分は働いている方が向いているのではないか」と悩むようになりました。

その後、訳あって急遽福島県郡山に移り住むことになりました。そこで初めての求職活動を経験しましたが、多くの企業から不採用となりました。

職探しに苦労する中で見つけたのがパソコン・家電メーカーの販売会社のアルバイトでした。面接担当者は、偶然にも私の出身県である岩手県から転勤してきたばかりの所長だったためか、話があい、奇跡的にアルバイトに採用されました。

アルバイト先では家電製品の配送を担当しましたが、実際は仕事が少なく暇な時間が多かったため、倉庫の整理を自主的に始めました。几帳面な性格からか私は商品を徹底的に分類しているうちに、倉庫内の在庫をすっかり把握できるようになりました。その知識を活かし、先輩営業マンの在庫確認を迅速にサポートしていきました。

先輩が注文をスムーズに受けることができた時、「私は役に立てているかも」と感じた瞬間の手応えは、今でも覚えています。

これらの経験を通じて、アルバイトの仕事でも主体的に取り組むことで価値を生み出せることを学びました。この姿勢は、現在の仕事にも大きく影響を与えています。

3、小さなつまずきが私を変えた瞬間

そんな風に手応えを感じながら仕事をしていましたが、ある日の朝、目が覚めると何故かこう思いました。

「あ~、なんか今日仕事に行きたくないなぁ、会社に行きたくないなぁ」と。特に仕事で嫌なことがあったわけでもありませんでしたが、結局そのまま無断欠勤をしてしまい、次の日、また次の日と、そのまま会社に行けなくなりました。

心配した所長が訪ねてきても、とうとうドアを開けることができませんでした。「もう会社に行けない、終わったな」と、家の天井を見上げながら、私は仕事を辞める覚悟を決めました。

その時もう一人の私がひょっこり出てきて、こう言いました。「おまえここまで来て、仕事さぼって会社に行けなくなって、何をやっているんだ」と。

その声を聞いて私は「確かに、何をやっているんだ、おれは。これじゃだめだ、会社へ行こう」と思い直し、翌日なんとか会社に行きました。

言い訳も何も言えません。「無断欠勤すみません。もう一度はたらかせてください」と頭を下げるしかありませんでした。すると所長は「わかった。おまえもう一度がんばれや」と言ってくれました。助けられました。

所長からその時、「昨日は君の入社試験の日だったんだよ」と知らされ、アルバイトから正社員になるチャンスを会社が用意していたことを知ったのでした。そして、私はそれを逃していたことを知りました。

もう一度アルバイトとして働くチャンスをもらえたことで、私は一生懸命仕事をしました。その甲斐あって、数か月後に入社試験の機会を再び得て、私は無事正社員になりました。

4、壁を乗り越えて見つけた使命

正社員として営業職を担当し、自社製品を売り込む仕事を始めました。当初、商品は売りにくく苦戦しましたが、営業の面白さにやりがいを見出しました。

時代が進むにつれパソコンが市場に広がり、自社の製品が好調に売れるようになりました。この時流に合わせ会社は、営業職を「パソコン専任セールス」と「総合セールス」の2つに分けることになりました。私はあえて売れ筋のパソコンではなく、小さな電気店を担当する総合セールスを選びました。この仕事は自分の行動次第で成果が変わるため、やりがいを感じていました。

しかしこの時流の中、私はパソコンに苦手意識を持っていました。一方職場ではパソコンができる社員が優遇されており、私は壁を感じていました。特にサポート部の人や専任セールスが専門用語を使って説明してくれても、私には理解できませんでした。

その悔しさの中、私は「みんながパソコンを使えるようになれば、この不公平もなくなるのでは?」と考え、会社を辞めパソコン教室を始めることを決意しました。しかし、私自身もパソコンができなかったため、パソコン教室のフランチャイズ本部のある九州で研修を受け、猛勉強を経て教室をオープンしました。

パソコンを学ぶことで、私自身も「できないこと」に挑戦する勇気を持つことができました。

5、 教えることで気づいた「伝える難しさ」

初めてパソコンに触れる生徒に教える中で、私は教える難しさを実感しました。生徒が「理解したつもり」でいても実際はそうでない場面に何度も遭遇したのです。

私が教えたことを、「教えたでしょ、先週もやったでしょ」と言っても、相手は「?」という表情をしていたり、実は全然理解していなかったりしました。いくらこちらが教えても、本人ができるようにならないと教えたことにはならないのです。

その時、前職のサポート部の人や専任セールスが専門用語を使って説明した時のことを思い出しました。ハッとしました。

「もしかしてあれは意地悪のつもりではなかったのかも」と気がつきました。「パソコンが全くわからない私に、わかるように教えられなかっただけかもしれない」と。

このとき、かつて意地悪だと思った人の行動も、単に教え方が未熟だったのかもしれないと気づきました。その経験から、相手が本当に理解しできるようになるまで工夫する重要性を学びました。

それ以来、相手にわかるように伝えるには、教えるにはどのようにしたらいいかを考えながら、日々仕事をしています。

6、人生の不思議さを思う

アルバイトから始めた私のキャリアですが、これまでの仕事で経験したことや、周りの方から頂いた言葉や教えがあり、さらにその時の私自身の気づきや気持ちや想い、考えがあって、私は今パソコンを「使える人」を育てる仕事をしています。

人生とは、仕事とはわからないものですね。自分が嫌いだったパソコンを「使える人」を育てる仕事を、26年も続けているのですから。本当に不思議なものです。

この後私は年齢80歳になるまで、創業からいえば50年の節目まで今の仕事を続けたいと思っています。

ここまで、私自身のキャリアを振り返ってみました。

皆さんもキャリアの方向性が明確になったエピソードや出会いなど、色々なきっかけがあることと思います。この機会に皆さんもキャリアの振り返りをなさってみてはいかがでしょうか?

この記事が皆さんの参考になりましたら幸いです。

次回は後編です。

後編では、生き活きとはたらくために活用できる制度をご紹介します。
こちらもご一読ください。


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佐々木和宏

〈経歴〉
パソコン・家電メーカーの営業職を経て、30歳のとき有限会社ノーティを設立し花巻市でパソコン教室をはじめる。その後、職業訓練の民間委託を受け、キャリアコンサルタント資格に出会う。NPO法人わこの家では事務局長として保育所や学童クラブの運営に携わり、はたらきやすい環境整備や業務のICT化に取り組む。

〈資格〉
国家資格キャリアコンサルタント